What You See Is What You Saw (あなたが見るものは,あなたが見ていたもの)

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カズボンの目玉。ここでキャッチした映像が脳で認識できるまで約0.3~0.5秒。

カズボンの目玉。ここでキャッチした映像が脳で認識できるまで約0.3~0.5秒。

Nikon D70 + SIGMA 50mm MACRO F2.8

最近は聞かなくなりましたが,一昔前のMacでは良く,“What You See Is What You Get”(WYSIWYG,ウィジウィグ; 画面で見ている物がそのままプリンタからでてくるヨ)の優位性が喧伝されていました。

画面の解像度が72dpiであって,フォントの「ポイント」との親和性が高いなどの理由から,比較的早い段階から,画面=印刷物という環境が整っていました(おいらもずっとMac派でした)。

それとは,まったく関係がない(ごめんなさい)のですが,最近「はっ」と気づいたことを,Appleの真似をして“What You See Is What You Sawと名付けてみました。

「あなたが見ているものは,あなたが見ていたもの」ということなのですが,それはどんなことなのでしょう・・・?

0.5秒前の過去

自動車教習所では,「危険を感じてからブレーキを踏み込み,実際にブレーキが利き始めるまでの時間」を「空走距離」と呼んで,スピードを出すことを戒めています。

おいらも教習所でこの話を聞いたのですが,「脳が判断してブレーキを踏むまでは遅れがあって当たり前だよな」くらいに思い,特に驚きはありませんでした。

しかし,もう少し深く考えてみると,驚くべきことがわかります。

ブレーキを踏む前には脳(または脊髄)で判断していますが,そのもう少し前には,目で物(急に飛び出した子供とか,猫とか)を見ています。

しかし,この「見る」にもタイムラグがあるのです。

子供や猫の像が目の水晶体を通って網膜に像を結び,視神経を経由して脳に届くまで,およそ0.3~0.5秒かかります。

子供として認識するのに0.5秒かかるのではなく,「脳に像の信号が届くまでに最大0.5秒かかる」ということなのです。

0.5秒後の世界を予想しないと,こういう写真は撮れない(笑)

0.5秒後の世界を予想しないと,こういう写真は撮れない(笑)

Nikon D70 + TAMRON 17-50mm F2.8

驚きませんか? おいらはものすごく驚きました。

自分では「今」と認識してみている世界が,実は「0.5秒前の世界」だったとは・・・。

私たち人類はみんな,0.5秒前の世界を見ているのです。


だからどうしたの? (^^;)

「だからどうしたの?」と言われると困るのですが,まぁ,実用面で言えば「気をつけましょうね」くらいです。

どんなにがんばって反射神経を鍛えても,そもそもの入力が「0.5秒前」ではどうにもなりません。

時速60km/hでダウンヒルしていれば(もちろん平地でもいいですが・・・),0.5秒あれば8.3m先まで進んでしまいます。

つまり,8m先に猫が飛び出てきたときには,猫の像を認識するまもなくぶつかることになります。もちろん,ノーブレーキです。0.5秒前の世界に猫はいなかったのですから・・・。

低速シャッターで撮れば,10km/hでも擬似猛スピード写真が撮れます。これで我慢しましょう(^^)

低速シャッターで撮れば,10km/hでも擬似猛スピード写真が撮れます。これで我慢しましょう(^^)

RICOH Caplio GX100

気が付いたら病院のベッド(または墓の下)にいた」という状態になるのでしょう。

怖いですねぇ。教習所の先生じゃないですが,気をつけましょうとしか言いようがないです。

8m先の見えない壁にぶつかる前,生きているうちにブレーキをかけましょう。
(^^)v

おしまい。

もうちょっと,詳しく知りたい人は,こちらの本をどんぞ。ライディングテクニックやエネルギーマネジメントだけではなく,交通安全についてもものすご~くわかりやすく書いてあります。視神経の遅れの話と,自転車で右側走行をしたときのリスクの高さについての解説は必見です!



おまけ(Color I See Is Not That You See)

以前,どこかで書きましたが,おいらは色弱です。

緑と赤の区別が非常に難しいです。

さらには,赤の仲間もほとんど区別できません。オレンジ,ピンク,赤,紫,みんな同じ「赤」に見えてしまいます。

抵抗のカラーコード(黒赤茶橙黄・・・)は知っていますが,目で見えないので,おいらにはあまり意味のない知識です。

網戸についた水滴を撮る。しかし,細かい色はよくわからない(涙)

網戸についた水滴を撮る。しかし,細かい色はよくわからない(涙)

Nikon D70 + SIGMA 50mm MACRO F2.8

だから,会社でカラフルな資料を作ったり,写真を撮ったりするのには大きなハンデになっている,,,,とは限らないのが不思議なところ。

色の区別ができない分,色の指定はとても厳密にやっています。目ではわからないので,RGBの成分で丁寧に指定するので,すべての資料で必ず同じパレットを使うことになり,わりと好評です。

少しでもコントラストが高まる(=色弱の人でも認識しやすい)ように工夫しますし,強調すべき色,懸案事項の色,ペンディングの色,実施済みの色,いつもかならず同じ色を使います。



ただ,たまにふと思うことがあります。

今,おいらが「赤い」と認識しているリンゴは,他の人にはどう見えているんだろう?」,と。

おいらには,暖かい,あの,「赤い色」に見えるのですが,それは他の人が認識している一般的な「赤い色」とあっているのでしょうか。

もっと,オレンジ色っぽかったり,真っ青だったり,金色だったりするのかもしれません。

で,これはおいらに限らず,どんなに言葉や数字を使ってお,「ボクが認識している色」と「キミが認識している色」が一致しているかどうかを確かめることは絶対にできないのですね。

個人が認識している「色」や「音」「味」などは,神経回路や脳という,その人個人の装置で認識している以上,他人と同じな方が不思議なくらい。

校正をしていない測定器で測ってるのですから,みんな,微妙に(または全く)違うように認識してあたりまえです。

こう言ったことを心に置いておけば,「言った,言わない」「見せた,見てない」「なんで同じ会議なのに,全然違う議事録なんだ?」なんていう,社内のごたごたの半分は納得がいってしまいそうな気がします(笑)


目が不自由(っていうほどじゃないですが)なおかげで,少しだけ深遠なことを考える機会をもらえたみたいです。

なにごとも感謝,感謝(^^)


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2010年11月02日 | カテゴリ:  自転車コラム | ID: 9892
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