2014年4~6月の読書記録
ちょっと間が空きましたが,4~6月の読書記録です。
ちょうどヒルクライムシーズン始まりの時期と重なっていますので,期間が長い割には,たいして読めませんでした。
2015年4月~6月の読書記録
定期的に読んでいる雑誌(カメラなど)を除く,この期間の主な読書は以下の通りです。
著者 | プチ感想 |
---|---|
『ハードボイルド・エッグ』 荻原浩 評価:★★★ | フィリップ・マーロウの世界(=ハードボイルド)に憧れる主人公の私立探偵。でも,実際には迷子の犬猫や爬虫類の捜索依頼ばかり・・・。 しかし,知り合いの父親が犬にかみ殺される事件に巻き込まれ,その真相を「秘書」とともに探るところから,ストーリーは面白くなっていきます。正直言って,ストーリーや謎解きはどうでもいい(?)感じで,ハードボイルドに憧れる主人公の生き方,ものの考え方が,ダサいんだけど格好良くて惹かれます。 全編にわたって,細かいギャグが散りばめられていて,ずっと笑っていました。図書館で読んだのでうろ覚えですが,帰国子女の男子中学生がシカゴに住んでいたことを知ると「シカゴか,いい街だぜあそこは。(行ったこと無いけどな)」みたいな感じで,チョイチョイ笑えるんです。 帯には「泣けるから注意!」みたいに書いてありますが,それはないかな?(笑) とにかく楽しい本でした。図書館に返しちゃったけど,BOOKOFFで見つけたら買って保存しようと思っています(^^) |
『さよならバースディ』 荻原浩 評価:★☆ | 『ハードボイルド・エッグ』が面白かったので,続けざまに荻原浩を読みました。 類人猿(ボノボ)の言語学習の研究をしていた教授が自殺し,その1年後,主人公の恋人もプロポーズを受けた日に同じ場所で飛び降り自殺してしまう。絶望的な悲しみの中で,残された主人公はボノボとの対話を通して事件の真相を探り・・・,という話なのですが,イマイチ楽しめませんでした。 プロットや謎解きの方法などは面白いと思うのですが,登場人物たちの描写が物足りなく,イマイチ感情移入できないのです。いまどき珍しい純粋な「学者さん」の主人公ですが,どうにもフニャフニャしていてしっくりこないし,恋人の由紀はとても重要な人物なのにほとんど内面描写されないので,「なんとなく可愛くていい娘なんだろうなぁ」くらいしか分かりません。 強烈なメッセージを残しつつ死を選ぶのですが,その理由も「こんな理由で自殺する?」という感じで,著者もそこをわかっているのか,由紀に特殊な条件を与えるなど,ちと無理やり感もあります。 着想が面白いだけに,チト残念な作品でした。 |
『コールドゲーム』 荻原浩 評価:☆ | 『さよならバースディ』でちと肩透かしを食らったのに,懲りずに荻原浩。しかし,『さよなら・・・』以上にもっとダメでした。 ひとことで言えば,「過去のイジメとその報復」を,イジメをしていた側からの視点で描いています。イジメの内容はかなり酷いのですが,主人公達はたいして反省もしていなく,どうしようもないバカ人間たちなので感情移入することができず,どちらかというとイジメられていた側に問題がありそうな表現もチョイチョイ出てきて不快でした。 今年は,胸を引き裂かれるような悲しい事件も現実にありました。こんな,明るく楽しい話にしてはいけない題材だと思います。 どうも,この作家はいい作品とそうじゃない作品の落差が激しすぎる気がします。事前に書評でも読んだ方がいいのかも・・・。 |
『間宮兄弟』 宮部みゆき 評価:★★★ | 超久しぶりの江國香織。15年くらい前までは,おいらが一番読んでいたのは江國香織で,ほとんどの著作を読んでいました。しばらくご無沙汰していたのですが,たまたま図書館で目に入って借りた『間宮兄弟』はとても良かった。 真面目だけと女性にもてない,冴えない30過ぎの兄弟の日常。この兄弟,見た目は冴えない(映画では佐々木蔵之介と塚地武雅です)し,仕事もたいしてできないのですが,二人で誠実につつましく,楽しく暮らしています。 無理をせず,見栄を張らず,四季折々のイベントや兄弟と親を大事にして,「ちゃんと生きている」というライフスタイルに惹かれます。最後まで何も大きな出来事は起きませんが,それが,この小説の見どころであり,間宮兄弟の魅力なのだと思います。 |
『ヒルクライムトレーニングの極意』 村山利男 評価:★★★ | すでに紹介していますが,自分よりはるか年上だけど,桁違いに速い人が書かれたヒルクライム本ということで,楽しく読めました。 「極意」というほど色々書いてあるわけではないですが,とにかく,「一定ペースで走ること」。 この大事さが良く分かりました(^^) |
こちらも,すでに紹介済み。 毎年同じことをローテーションして書いているBIG3(BIG2になっちゃうんでしたっけ)とは少し違った角度で,面白い自転車雑誌でした。 今あったら,ロードマン乗ってみたいなぁ・・・。 | |
『写真の便利帳』 MdN 評価:★★ | impressの「デジカメwatch」でずっと集中的に広告されていたので,まんまと購入(笑) 普通の写真入門書よりもちょっとだけ踏み込んだ感じで,何を撮るべきか,どう表現するべきか,目的に合った撮り方とは,といったことも書かれています。 が,なんか,物足りなさも感じてしまっていたりします。まぁ,写真を10年以上やっていて,何十冊も「入門書」を読んでいたら,さすがに飽きてきますよね。 これは,本の問題ではなく自分の問題です,たぶん。あほだなぁ>じぶん。 |
『自転車と健康』 前田 寛 岡内 優明 石橋 健司 評価:★★★ | BOOKOFFで100円で購入。1999年発売のかなり古い自転車入門の本なのですが,人体の構造(骨格・エネルギー供給・筋肉など)から,安全・効率的な走りを科学的に検証している,実に面白い本です。 詳細は下記を。 |
これまたBOOKOFFで100円。自転車バカであれば「あ~,あるある」的な話がたくさん載っています。 ただ,それだけですので,100円であれば楽しめるけど,定価(1080円)だとチトきつい。 立ち読みすると10分もあれば読みきってしまう薄さも△かなぁ・・・。 |
自転車と健康
1999年発売と,かなり古い自転車の入門書です。
しかし,最近の「どれを読んでもほぼ同じ内容」という入門書とは異なり,実にオリジナリティーが高い本です。
中身を説明し始めるとキリが無いのですが,今時の自転車入門書ではこんなこと,まず書いて無いと思います。
- 骨格の構造,筋の収縮,拮抗筋
- 各種一流スポーツ選手の速筋・遅筋の比率,最大酸素摂取量
- 筋肉のポンピング作用
- ウォーキング・ジョギング・サイクリングの経済速度
- 水分排泄量と脱水症状の進行
- グローブ有無による体温変化
- 運動中の腹痛の原因・回避方法
- 万一の場合のテーピング
- 必須アミノ酸,プロテインスコア
- 体内に蓄積可能なエネルギー量(肝臓,血液中,筋肉,脂肪)
- ワンデー / ステージレースのグリコーゲンローディング
- ペダル踏力と推進力
- 脚の関節トルクの発生メカニズム
- パワーメーターの試作(まだ世の中に無かったと思われます)
- 仕事量・回転数・筋肉放電量から求める最適ケイデンス
- パワーと心拍の関係
- 普通に「自転車の買い方」や「交通ルール」
- 今中大介インタビュー
どうでしょう? すごすぎます。
理由も無く「90rpmで回しましょう」とか「こまめに水を飲みましょう」と書いてある入門書とはレベルが違います。
今から20年近く前の話なので,計測機器等も発達してなかったのでしょうけど,研究室で脚のトルクやパワーを計測できる装置を試作し,それに基づいて色んな検証をしています。
おぉぉ,パワーメーターのようなものを研究室で作っている!
Nikon D600 + Nikkor Micro 60mm F2.8これだけの内容を,よく180ページ弱の厚さにまとめたと思い,感心します。
オールモノクロで,写真も少ないですが,その代わりに表・グラフ・計算式がたくさん登場し,いかにも「大学の本」といった感じです(出版は東京電機大です)。
試験問題かと思っちゃいます(笑)
Nikon D600 + Nikkor Micro 60mm F2.8初心者がいきなり読むにはハードルが高いですが,ある程度やりこんだ人が読み直すと,「あぁ,こういう理由だったのか」とガッテンできることが多いのでは,と思います。
写真やカメラの本も同じなのですが,昔の本のほうが真面目に一生懸命作られている気がしてしょうがないです。
見た目が派手なカラー写真や,「クイックレバーの使い方」みたいなことばかり書いている現在の入門書を見ると,もうちっと見習って欲しい気がします。
- ■「本」カテゴリー内の前後記事
-
- 1件新しい記事:込山 富秀 『「青春18きっぷ」ポスター紀行』
- 1件古い記事 :村山利男『ヒルクライムトレーニングの極意』