[ヒヤリハット] スポーク損傷で大事故寸前!

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げは~,スポークが破断寸前じゃないか~!

げは~,スポークが破断寸前じゃないか~!

Nikon D90 + Nikkor Micro 60mm F2.8

すでに一部情報がリークしていますが(自分だけど),先日のスバルライン試走のダウンヒルで,とんでもないヒヤリ・ハットを経験しました。

それは,上の写真の通り,リアホイールスポークの破断未遂です。

50km/hを超える速度のダウンヒル中,こんな状態のスポークが1本でも破断したら,連鎖的に複数のスポークが破断して,他のスポークやチェーンに絡みつき,,,想像すらしたくない第三次大惨事になっていたかもしれません。

あぁ,いまだに怖くて怖くて,バラバラになったリアホイールと,スバルラインを血だらけで転がっていく自分が思い浮かんでしまいます・・・。

※以下,リアタイヤのスプロケが付いている側をDS(Drive Side),付いていない側をNDS(Non-Drive Side)と呼びます。

スポーク損傷の原因

DSのスポークがこんな風にボロボロに損傷してしまったのは,GW中に出かけたヤビツアタックで,チェーンがロー側に脱落して食い込んでしまった事件が原因です。

これが,すべての始まりでした・・・。

これが,すべての始まりでした・・・。

SONY DSC-TX10

ほんの10km/h程度の速度だったのですが,チェーンはDSスポーク~スプロケ間にキツく入り込んでしまい,なかなか外すことができませんでした。

結局,ミッシングリンクでチェーンを切断して車体からホイールを取り外し,手作業でぐいぐい引っ張ることでようやく外すことができました。

このとき,スポークとチェーンがこすれてしまったことにより,か細いスポーク側が削れて損傷してしまったと思われます。

スポーク損傷の状況

おいらのReynolds MV32Tは2010年モデル(現行モデルはThirty Two)で,リアホイルのスポーク構成は以下のようになっています。

項目ドライブ側(DS)ノンドライブ側(NDS)
スポークDT SWISS
COMPETITION
DT SWISS
AEROLITE
組み方クロス4本組みラジアル
本数12本12本

チェーンが絡まったことが損傷の原因ですから,NDSのスポーク12本はもちろん無傷です。

反対のDSはクロス組みになっていて,損傷したのは,チェーンと接触しやすい,漕いだときにテンションが緩む側の6本です。

ドライブ側12本のうち,6本が削れていました(涙)

ドライブ側12本のうち,6本が削れていました(涙)

Nikon D90 + Nikkor Micro 60mm F2.8

どのスポークも,ハブのフランジの縁の部分で激しく削られています。

被害が酷いスポークになると,断面積(Competitionは丸断面)は半分くらいになっています。

もう,千切れる寸前のスポークも・・・。

もう,千切れる寸前のスポークも・・・。

Nikon D90 + Nikkor Micro 60mm F2.8

さらに状況を確認するためにスポークを外したいのですが,MV32Tは面倒なことに,ニップルがリム内部に埋め込んである「インターナルニップル方式」。

ニップル調整をするにはタイヤを剥がす必要があり,つい先日貼ったばかりのニュータイヤ(EliteJet<160g)を剥がし取り,また,巨大なハナクソを製造してしまいました。

とりあえず,スポークを1本外してみると(全部外すとたぶん組み直せない・・・),削れているだけではなく,その細くなった部分で曲がっていることも分かりました。

本来は全部まっすぐなのですが,1本,斜めになっています。

本来は全部まっすぐなのですが,1本,斜めになっています。

Nikon D90 + Nikkor Micro 60mm F2.8
斜めに折れ曲がっています。

斜めに折れ曲がっています。

Nikon D90 + Nikkor Micro 60mm F2.8

酷い状況です・・・(涙)

こんな状態のホイールに命を託し,24kmにわたる長いダウンヒルを,50km/hで下ってきたのです。

一般的に,破断するのは「DSの漕いだときに引っ張られるスポーク」のようですが,今回損傷したスポークは「緩む側」だったのが幸いだったのかもしれません。

それでも,ダウンヒルの途中にはいくつも段差があったし,ここまで傷ついたスポークなら,ちょっとした振動やテンションの増減だけでも破断してしまいそうです。

本当,大事故に至らなかったのは「運」だったんだろうなぁ・・・。


今後の対応 ― スポーク取替えに挑戦!

幸いなことに,2010年モデルのMV32Tのスポークは,あちこちで普通に市販されている,DT SWISSのCOMPETITIONというスポーク。

1本100円くらいですから,12本全部を張り直しても1200円で済みます。

しかし,多くのロード乗りの方がそうだと思うのですが,色んなメンテナンスを自分でやりつつも,「スポーク作業だけはちょっと・・・」という人が多いのではないでしょうか?

あんな針金の張り度合いを調整するだけで,ホイールを真円に保ち,ハブがセンターに来るように,かつ,テンションを均一にするなんて,職人技だと思います。

しかし,cressonさんの「簡単ですよ」というコメントをはじめ,ネット上では多くの方がDIYでやっておられる模様。

幸い,手元には,専用のニップルレンチの他,スポークテンションメーターまであります。

ParkToolのテンションメータ。今まで宝の持ち腐れでしたが,出番が来たぞ!

ParkToolのテンションメータ。今まで宝の持ち腐れでしたが,出番が来たぞ!

Nikon D90 + TAMRON 17-50mm F2.8

あとは,振れ取り台と,センターゲージ,それと根気があればなんとかなりそうです。というわけで,自分で修復することに決定し,さっそく以下のものを取り寄せました。

種類ドライブ側(DS)購入先備考
振れ取り台ミノウラ FT-1ワールドサイクルセンターゲージ付き
ニップルレイノルズ専用セットスターサイクルamazon経由
スポークDT Competition 2.0/1.8タキザワサイクル20本

普通,スポークは100本単位(!)で売っているようですが,タキザワサイクルというお店では,なんと1本から取り寄せができるので助かりました。

Reynolds専用のインターナルタイプのニップルは楽天だとワールドサイクルだけで売っているのですが,残念ながら売り切れ。amazon経由でスターサイクルから購入です(600円)

今週末からは,ホイール職人目指して,DSスポークの張替え作業開始です。

いつものように,色んなトラブルに見舞われますが,いつものように新しい楽しさ・領域に入り込んでいくようで,少しワクワクしています(^^)

専用のニップルレンチ片手に,がんばろう!(^^)

専用のニップルレンチ片手に,がんばろう!(^^)

Nikon D600 + Nikkor Micro 60mm F2.8





【特別おまけ】スポーク損傷発見の経緯

上に書いたとおり,損傷原因は分かっているのですが,チェーン脱落時はここまで酷く損傷していることに気が付かず,その後も一週間にわたって気が付けるチャンスがいくつもあったのに,すべて見逃してしまっていました。

猛省の意味を込めて,恥ずかしながら,スポーク損傷を発見するに至った経緯を紹介します。


【発見チャンス1】チェーン脱落時の対応

チェーンはDSスポークとスプロケ(のロー側)の間に落ちるので,傷つくのは,DSスポークのスプロケ側になります。

となると,なかなか目で見つけることがしにくく,NDS側からはまったく正常ですし,真上から覗いた時は「ちょっと傷ついたか?」くらいにしま見えませんでした。この時点で,もっと精査すれば見つけられたと思います。

ぱっと見た感じでは,こんなに痛んでいるとは気が付きませんでした。

ぱっと見た感じでは,こんなに痛んでいるとは気が付きませんでした。

SONY DSC-TX10


【発見チャンス2】チェーン脱落修復直後

トラブル修復後に走り出したときはリア変速が不調になり,その場でSIS調整をやり直しました。

このときは,「ホイールやチェーンの着脱があったからかな?」と思ったのですが,チェーン着脱くらいでSISが狂うわけないので,その原因をもう少し考えればスポークの変形に気が付いたと思われます。



【発見チャンス3】別ホイールに交換したとき

ヤビツから帰宅してホイールをSHAMALに戻したのですが,またもリア変速の調子が良くなくて,SIS調整をやり直しました。

このときは,「そろそろワイヤが駄目になってきたのかなぁ?」なんて思い込んでいました。半年以上使っているワイヤが1日でさらに伸びるわけ無いのですが・・・。



【発見チャンス4】再度MV32Tに戻したとき

そしてスバルライン試走。

当然,勝負ホイールであるMV32Tに戻したわけですが,またもリア変速の調子が良くありません。

今度は「1週間前にやったスプロケ掃除のときに,ロー側のスペーサーを入れ忘れたかな?」と思いながらSIS調整をやりなおしました。

こうやって,MV32Tからの最後の警告にも気が付くことができませんでした。

なかなか見にくいのは確かなのですが・・・。

なかなか見にくいのは確かなのですが・・・。

Nikon D90 + Nikkor Micro 60mm F2.8

最終的には,スバルライン試走の翌日に,「そういや,スペーサー入れ忘れていたかも。直さないと」と思い出し,スプロケットを外したところで,この状況を目の当たりにして絶句してしまいました。

ここに至るまで,4回も気が付けるチャンスがあったにも関わらず,「○○だから大丈夫だろう」という都合の良い考えで危険なシグナルを全て見逃し,命がけのダウンヒルをすることになってしまいました。

ヒューマンエラーの世界でよく言われる「正常化バイアス」の典型的な(悪い)例だと思います。

人間には,普段と違う状況に気が付いても,なるべく,「たいしたことない」「いつもと同じだよ」と思い込もうという心理的な傾向(バイアス)があります。

有名なのは,2003年に韓国で起きた地下鉄火災(放火)で約200人が死亡した事件での写真があります。

煙が立ち込め,明らかに命の危険が近づいているのに,なかなか動き出せない。

煙が立ち込め,明らかに命の危険が近づいているのに,なかなか動き出せない。

火災によって煙が充満しつつある車両内で,じっとしている乗客の写真です(撮影しているのも乗客です)。

どう見たって危険な状況であり,逃げるべきなのに,多くの乗客がこのような状況で死亡したそうです。

この場合は「他人に合わせてしまう」という心理バイアスも大きかったようですが,先日の(これも韓国の)フェリー沈没事故でも同じようなことが起きていたのかもしれません。

自動車などと違って,極限まで部品や構造を絞りに絞って冗長性がほとんどないロードバイク。

どのパーツが壊れても,ほぼ間違いなく走行に悪影響を与えます(サイコンやライトくらいか?)

分かってはいるのだけど,「大丈夫だろう」と思いたくなるのが,ずぼらなおいら。

今後は,どんな小さなことでも異変を見つけたら,「だろう」ではなく「だ」と断言できるまで状況を確認するよう,本気で猛省中です。

気をつけないとなぁ・・・。


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2014年05月14日 | カテゴリ:  ヒヤリ | ID: 11039
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