2014年2~3月の読書記録

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昨年末ごろから伊坂幸太郎熱にうなされてしまい(そのまえは浅田次郎だった),3ヶ月ほど伊坂幸太郎の小説ばかり読み続けていたのですが,ようやく12冊目で一休み。

と思ったら,今度は奥田英朗熱にかかってしまいました・・・。

2014年2~3月の主な読書はこんな感じです。

著者プチ感想
イン・ザ・プール (文春文庫)
『イン・ザ・プール』


空中ブランコ (文春文庫)
『空中ブランコ』


町長選挙 (文春文庫)
『町長選挙』
奥田英朗

伊良部総合病院の地下1階,神経科を舞台にした短編集のシリーズ3冊。

主人公は,超型破り(というより変人か?)な神経科医の伊良部一郎と,超セクシー(で不機嫌)な看護婦のマユミちゃんの二人。あとは,毎回毎回,これまた型破りな患者さんたちが現れてはめちゃくちゃな診療で立ち直ったり,立ち直らなかったり・・・。

1話が短いので通勤の片道で1話ずつ読むにはちょうどよく,誰にでも「自分にもこんな面があるかも」と思いつつ,駅に着いたころには「そうだよ,そういうことだよ!」と心が軽くなることうけあい。デタラメな中にも,現代人の寂しさや落とし穴が描かれていたり,楽しみながらも考えさせられる楽しい小説でした。

延長戦に入りました (幻冬舎文庫)
『延長戦に入りました』
奥田英朗

「ボブスレーの2番目に乗っている選手は何をしているのか?」「中学生同士の怪我自慢」「50m走が早かったヤツのその後」「なんでレスリングは乳首を出すのか」などなど,様々なスポーツに関連した,誰もが思う疑問や感想をストレートに,しかも,とてもうまい文体で話すエッセイ集。

ちょっと古い本なのですが,この面白さは一体何なんだ!?という面白さで,電車の中で読むのは危険です(浅田次郎と反対。笑いすぎちゃう)。特にスポーツが好きな人にはツボにはまるかも!

ペテロの葬列
『ペテロの葬列』
宮部みゆき
すでに読了直後の憤懣やるかたなさ(読んだ人なら分かるはず!)を書いてあるので省略。思い出しても,プスプスきてしまいます・・・。
さがしもの (新潮文庫)
『さがしもの』
角田光代

久しぶりの角田光代。男で読んでいる人は少ないと思うのですが,でもやっぱり,角田光代はいいなぁと思う。すべて特定の「本」に関連した9つの短編集。

古本屋で売っても売っても,次にどこかで再会する不思議な本。

好き合って同棲を始めるときに二人の本棚をひとつにし,そして別れとともに本棚を分けていく。

文芸の新人賞を受賞した主人公が,高校生のときに万引きした本を返すために帰郷する話。

死にいく祖母に頼まれた本を探す女子中学生,などなど。

どの小説も角田光代らしく,決して熱くならず,ウェットにもならないのだけど,本に関する人々の深い思いが静かにつづられていて,小説世界の愉しさのみならず,人生もいいこと悪いことあるけど,いいじゃないかと静かに思えます。全部,「本」に関する小説なので,本を愛する人(=うちの長男とか)は間違いなく楽しめ,そうではない人(=うちの次男とか)にはさっぱり響かないかもしれないなぁ・・・。

バイシクルライディングブック DVD BOOK
『バイシクル
・ライディング
・ブック』
竹谷賢二

おいらにとって,竹谷賢二氏の2冊目の本(1冊目はバイシクル・トレーニング・ブック)。3月にもなっていまさら感が強いですが,この夏のヒルクライムに向けてトレーニングやライディングの仕方を学びなおしています。一瞬,やまめの学校の『自転車の教科書』も候補にしたのですが,あまりにも今の自分とかけ離れていて,混乱してしまいそうなので,とりあえず,こちらの本で再勉強。

内容は,最初のフォームから,ペダリング,コーナリング,ブレーキング,ダンシング,上り,下り,集団走行と,およそロードバイクに乗っていて必要なライディングテクニックは全部網羅していると思います。一つ一つの内容は,BicycleClubやCycleSport誌などでもよく紹介されている話ですが,この手の話(ライディングテクニック)って,テキスト&写真だけでは,なかなか分かりにくいことが多いと思います。

本書は,内容と連動したDVDが付いてくるので,実際の動きが分かってとてもいい感じです。DVDを見る時間って意外と確保できないのですが,最近ではローラー台やりながら見ています。DVDが付いて1800円ならお買い得です(^^)

ナショナルジオグラフィック プロの撮り方 クローズアップ
『ナショナルジオグラフィック
プロの撮り方
クローズアップ』
ブライアン・ピーターソン
しらばく前からクローズアップ写真に興味を持っていますが,一般的な写真入門書は判で押したように,「接写=花撮影」となっていて,そのほかの対象物については一切触れていません。しかし,マクロレンズを買った人なら分かると思うのですが,普通の看板や道路なんかも接写すると面白いし,キッチンなんかは食材や食器類など,接写すると面白い被写体の宝庫といっていいでしょう。本書は,花よりも後者を優先した,珍しい接写入門書です。拙者もがんばります!(これが言いたかっただけか・・・?)

奥田英朗,伊良部総合病院シリーズ

会社で年度末が近づくと,部下の業績評価や異動検討など,いろいろと「人関係の仕事」が増えてきます。

これが大好きな人もいますし,もちろん,高い評価を付けてあげられる部下については楽しい仕事です。より幅広い経験を積むべく,いい場所に栄転させてしまうのにもためらいはありません。

んが,逆の場合は本当に心労が増えます。評価は低くならざるを得ないし,本当はよそに飛ばしてしまいたいくらいだけど,自分の責任で改善させねば。異動の話もあるけど,確実に異動先から文句が来るだろうし・・・,などなど。

なんて,一人芝居で(?)モヤモヤしていた3月に,前者のタイプの部下から「マネージャーも色々大変ですねぇ。面白い本お貸ししますよ♪」と借りたのが,奥田英朗の『イン・ザ・プール』『空中ブランコ』『町長選挙』の,伊良部総合病院3部作。

破天荒(というレベルではない。小学生並の思考?)な精神科医である伊良部一郎のもとを訪れる,これまた型破りな患者たちとのやりとりが面白おかしく繰り広げられます。

どんな患者さん達なのかというと,

  • 水泳にはまってしまい,営業時間外のプールに侵入してでも泳ぎたい男
  • ケータイが無いと1秒もじっとしていられない高校生
  • 家の鍵はかけたか,火の始末は大丈夫か,気になって外出できない男
  • 年の割にはすごく若い,を売りにし続けている女優
  • 仲間がわざと自分を失敗させようとしていると思い込んでいるサーカス団員
  • 若手の台頭におびえ,まっすぐ投げることができなくなった野球選手
  • ひらがなが書けなくなってしまったIT企業家
  • 先端恐怖症のヤクザ

こうやって列挙すると,トンデモない患者さん達に見えてしまうかもしれませんが,少なくともおいらはいくつかの患者さんにシンパシーを感じてしまい,「あぁ,自分にもこういう面ってあるなぁ」と思いあたるフシがありました。

これらの患者さんたちが,ひょんなことから伊良部総合病院を訪れ,トンデモ医師の伊良部先生の治療が・・・。

全然,始まらないのです。

伊良部先生は「注射」が大好物なので,患者はドアを開けてはいるなり,腕を押さえられ,時にはマユミちゃんのセクシー攻撃(?)に騙され,極太の注射を打たれるところから通院が始まります。

一応,患者の話は聞くのですが,「そんなのやめちゃえば?」とか「僕も一緒にやってみる!」とか,小学生レベルの返事しかしれくれません。

どの患者も,最初は「なんなんだ,このバカ医者は」と思いつつも,「一理あるよな」「俺が気にしすぎなんだよな」「俺だけが特殊じゃないのかも」みたいな思いを少しずつ膨らませていきます。

ほとんど全編が大笑いしてしまうような話ばかりですが,シリーズ2作目の「空中ブランコ」では,ほろりと泣けてしまうようなシーンも出てきます。(直木賞受賞ですし!)

社会人になってまもなく20年ですが,なんでももっと早く読まなかったんだと後悔しきり。「人関係の仕事」で思い悩み,こんな本が必要だと部下に思わせてしまったことに反省しつつ,大感謝です(笑)

安心してくれ,キミはこの夏,上司の推薦で栄転を経験することになる(はずだ)。



奥田英朗『延長戦に入りました』

こちらも猛烈に面白い。

色んなスポーツに対して素直に感じる疑問を,そのままの形でエッセイにしてしまった本です。

随所に「真面目にこの種目に取り組んでいる人,ごめんなさい」と書かれていますが,きっと,書かれた種目の人たちも大笑いしていると期待します。

20くらいのエッセイが入っているのですが,おいらが気に入ったのはこんな話。

【ボブスレーの前から2番目の選手は何をする人なのか】
パーティーなんかで,「ボブスレーをやっているんです。前から2番目に乗る役です」と言われた場合,どう反応すべきなのか。
【トップバッターの資質と学校の出世基準】
あ行の生徒は本当に大変。準備無しでいきなり指名されるし,注射もされる。だから,各球団のトップバッターは,あ行の選手が多・・・・くなかった。同様に,わ行の生徒は我慢強い・・・?
【50m走タイムと彼の黄金時代】
小さいころは「足が速いこと」は絶対的に偉いけど,歳をとると「だから?」になっていく・・・。それでも,何歳になっても,どんな場面でも「本当の俺はもっとすごい」と思い続けるすごさ。
【ハイジャンプと着地という現実】
着地で怪我のリスクが無い「背面飛び」はぬるい! 鉄条網を脱走することを考えれば分かる。着地まで考えてこそのハイジャンプ。だから自分はベリーロールが好きだ。
【ひそかなる故障の楽しみ】
中学の運動選手の怪我自慢。なるべく難しい病名が周囲に自慢できる(笑)でも,レギュラーの選抜から漏れない程度にしなければならないという,高度な難しさがある。
【スポーツの語り草と一人歩きする伝説】
スポーツ界の各種「伝説」はかなり怪しい。沢村賞も日米で0対10,1対14,5対14とボロ負けした後に,0対1だったのが本当。実は相手(アメリカ)も飽きてきていたんじゃ?

馬鹿馬鹿しすぎて,どれも笑ってしまいました。

伊良部総合病院シリーズ以上に力を抜いて,適当~に読むことができるエッセイ集です(^^)

自転車,特に坂バカも取り上げて欲しかったなぁ(笑)


■「本」カテゴリー内の前後記事
2014年04月21日 | カテゴリ:  | ID: 11017
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