2014年9月の読書記録

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珍しく,ちゃんと1ヶ月の読書記録。

ここのところ,ずっと奥田英朗を読み続けていたため,一休みして,井坂幸太郎に戻ってきました。

また,新たに,荻原浩も開拓中です(^^)


2014年9月の主な読書はこんな感じです。

著者プチ感想
終末のフール (集英社文庫)
『週末のフール』
伊坂幸太郎


評価:★★★

「3年後に小惑星が衝突して地球は終わる」という設定の連作短編集。SFではありがちな設定ですが,衝突が予告されて世界中が大混乱に陥り,多くの人が命を落としたり,国中が荒廃した,その少しあとの「一時的に世の中が落ち着きを取り戻した期間」が舞台です。

今の私達の暮らし,社会の仕組み,生き方などの全てが,ある程度(ほぼ永久に)地球・世界が続いていくことを前提にしていることに気が付かされます。

毎日働く,子供を生んで育てる,過去を反省する,体を鍛える・・・,何もかも「あと3年しかないんじゃな」という圧倒的パワーの前に意味を失います。なんとなく,定年間際のオジサマに観測される生態でもありますが(笑)

それでも,誰かが誰かを許し,今のときを大事に生きていく姿が温かい。伊坂幸太郎にしては珍しく(?)ほんわかした気分になる良書だと思います。読んでよかった~(^^)

ゴールデンスランバー (新潮文庫)
『ゴールデンスランバー』
伊坂幸太郎


評価:★★★

何年か前に映画化されたのをTVで観ていたのですが,幸か不幸か,完全に忘れているので小説で読み直しです。

首相が暗殺され,その容疑者に仕立て上げられていく男の話。作中にもちょいちょい出てきますが,JFK事件で言うところの,オズワルドにされそうになる男を中心にした物語です。

国家や組織といった巨大な力に押しつぶされそうになりながらも,ちょっと変わった人たちの助けや,本人の機転でなんとか切り抜けていった先には・・・。「都合が良すぎる」「解決になっていない」などの不満を持つ人も多いようですが,おいらとしては実に楽しい小説でしたし,エンディングも爽やかでとても良かったと自負しております(なんで自負やねん)。

映画の内容も徐々に思い出してきたのですが,実に良くできていたと思います(竹内結子さん大好きだし)。もともとの原作が,映画化・ドラマ化しやすいような場面が多いからかもしれません。

バイバイ、ブラックバード (双葉文庫)
『バイバイ,ブラックバード』
伊坂幸太郎


評価:★★

なんというか・・・,変わった小説です。でも悪くない。

5人の女性と同時に付き合っていた(5股?)男が,どういうわけか,マツコDXみたいな女に捕まり,まもなく恐ろしい「バス」に乗せられてしまうことになる。そこで,マツコDXが5人の女性を順番に回り,男と縁を切らせるという話が5編続きます。

もう,まったく意味不明な話なですが,5人の女性との間のエピソードがどれもこれも良くて,めちゃくちゃで意味不明な設定ながらも心に染みます。

謎の短編集です。でも悪くない。

いいよ,伊坂幸太郎~(^^)

マリアビートル (角川文庫)
『マリアビートル』
伊坂幸太郎


評価:★なし

「5人の殺し屋と狡猾な中学生,物騒な奴らを乗せた新幹線は,北を目指し疾走する!『グラスホッパー』に続く,殺し屋たちの狂奏曲!」と紹介されていますが,全然面白くない。伊坂幸太郎作品では最悪カモ。

人が簡単に死にすぎ,殺したほうは「あ,いけね殺しちゃった」,殺されたほうも「死ぬのか。いやだな」程度な軽さは,氏の作品ではいつものことなのでいいでしょう。しかし,中学生が,同級生や6歳児を殺害し,その目的,主張,他者への果てしない侮蔑など,読んでいて胸糞悪くなるだけで,何もイイコトはなかったなぁ。

後半はほとんど全員がうっかり死んじゃうし。7割くらい読み飛ばしてしまったので,途中にイイコトが書いてあったのかもしれないけど,おいらの目には全く入りませんでした。

「パート2はつまらない」ということを証明するために書かれた小説なのかもしれない。エンディングもどうしようもないし,あたりハズレが大きいなぁ。

伊坂太郎の作品で,本書を一番最初に読んでいたら,2度とこの作者の本は読まなかったくらいのハズレでした・・・。

100円返せ~,いや,108円だ!

明日の記憶 (光文社文庫)
『明日の記憶』
荻原浩


評価:★★★

ここ数ヶ月,読み続けている奥田英朗を探しにBOOKOFFに行ったら,すぐ隣の荻原浩の棚にあった本書が目に入って購入(108円)。

若年性アルツハイマー病に冒され,徐々に記憶を失っていく男性の話。おいらは,「アルツハイマー」というと「物忘れがひどくなる」程度の認識しかなかったのですが,「記憶を失う」ということはどれだけ辛いことなのか,主人公の努力や焦りを見ていて切なくなってしまいました。

おいらも記憶力が非常に低くて,人名や顔が思い出せないことが日常ですが,アルツハイマー病では,会社の同僚や,自宅への帰り道,娘の結婚相手などもわからなくなり,最後には最愛の人ですら思い出せなくなる。

記憶がなくなるということは,何のために生きているのか,それすら分からなくなってくるということでもあり,「最後には人格が崩壊していく」という恐ろしい事実に,主人公も恐れおののいていきます。

人間とは,なんと儚い(はかない)ものなのか,という思いを抱くとともに,せめてもと,素敵なラストを用意してくれた作者に感謝です。

今年の前半に夢中に読んでいた井坂幸太郎。

作品の発表順に読んでいたのですが,初期のころの作品は安定した面白さがありました。

が,今回,もう少し後の作品群を読んでみると,(おいらにとっての)ヒット作とハズレ作の落差が激しいです。

Amazonなんかのユーザーレビューを見ても,評価の高い人がいる一方で,ものすごく落胆している人たちもいます。

まぁ,それくらいじゃないと,「マンネリ化」とか「幅が狭い」などと言われてしまうのも事実ですから,作家さんも大変ですね(^^)

これからも,期待を半分くらい持ちながら,井坂幸太郎は読み続けていくと思います(来月は「SOSの猿」「オーファーザー」あたりの予定)。



また,いつもの奥田英朗の小説を探していて,すぐ隣(同じ「お」ですから)の,荻原浩の小説に手を出し始めました。

今月は「明日の記憶」という,切なく,重く,最後に温かい小説を読み終わりました。

とてもいいです。

表現が実に細やかで温かみがあります。

今読んでいる,『神様からひと言』はうって変わって,奥田英朗の小説のようなドタバタした楽しさがあります。

『僕たちの戦争』や「砂の王国』『あの日にドライブ』なども確保しました(108円ですが)。

来月は荻原浩特集になりそうです(^^)


■「本」カテゴリー内の前後記事
2014年10月08日 | カテゴリ:  | ID: 11201
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