2012年2月の読書記録

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今月は小説4冊&多数のカメラ雑誌を読みました(^^)

カメラ雑誌の方はさておき,小説の方はどれを読んでも楽しく,珍しく当たり月でした。

ちと読書の傾向が年寄りっぽくなってきた気がしないでもないですが・・・(笑)

2月の読書記録はこんな感じです。

タイトル・著者プチ感想
70歳のロードバイク―生涯自転車計画スタート!
『70歳のロードバイク
-生涯自転車計画スタート!』
長尾 藤三
図書館で見つけ,中身を確認しないまま読書開始。
速く走るばかりが自転車じゃないとか,スポーツ本来の姿(「競う」のはオマケで本来は「気晴らし」)など,「いいことがいっぱい書いてあるなぁ」なんて思ったら,以前読んで共感した『快感自転車塾』と同じ著者の長尾藤三さんでした(笑)
ちょっと,「なんでもかんでも自転車が最高!」という,自転車原理主義的なところもありますが,それを割り引いても楽しい本です。70歳まではまだ遠い,という人も一度は読んでみる価値アリです。
とんび
『とんび』
重松清
重松清オジサンの典型的な小説。重松ワールド全開です。
「父と息子」という,著者が描き続けているテーマであり,こっちとしても,何度も同じテーマの小説を読まされてきているのに,やっぱり泣けてしまいます。ただ,著者のほかの小説と少し違うのは,「父親も成長していく」というところかな,と思います。腕っ節が強くて気が短い主人公が,妻を持ち,子を持ち,そして,妻を失い,子どもと一緒に成長していく。その家庭で,父と子の関係や,周囲の人間の暖かさに涙してしまいます。もうしばらくは,重松清は読まなくていいです。また泣かされちゃうので(笑)
ブランケット・キャッツ
『ブランケット・キャッツ』
重松清
なんか表紙がとてもかわいくて,つい購入(ブックオフ半額デー) 2~3話だけ読んで保留中。『とんび』による重松熱が冷めるのを待って,いつか読みます(笑)
銀輪の覇者 (ハヤカワ・ミステリワールド)
『斎藤純』
銀輪の覇者
自転車乗りの間では有名な小説でしょう(^^)
メインは,戦前に行われた自転車レースなのですが,レースそのものより,そこに関わる人たちや戦前の世相などが楽しめる小説。詳細はページ下部を参照ください(^^)


重松清『とんび』

予想してましたが,やられました・・・(笑)

子持ちのお父さんは,通勤電車で読んではいけません。(花粉症シーズンはごまかせるかもしれない)

不幸な事故で子どもをかばって亡くなってしまった妻(母)。残された父と息子の,二人三脚の成長物語です。

昔気質の父親は頑固でひねくれていて,それでいて子どもっぽくて,涙もろい。一方の息子の方は,かわいいだけだった幼児から,反抗期や思春期を経て,成人して,社会人になっていく。

そして,この二人を取り巻く周囲の人たち(会社同僚,飲み仲間,友人など)がとても暖かく,古き善き昭和という時代を強く感じます。

映画「ALWAYS」のような人たちだなぁ,と思っていたら,正月に「とんび」もドラマ化されていて,主人公の父親役は堤真一でした。おんなじじゃん!(笑)

録画してあるので,これから楽しく見てみよう~



70歳のロードバイク -生涯自転車計画スタート!

速く走ったり,技術を磨いたり,メンテナンスうんぬんというノウハウ・知識はほとんど載っていません。前半は「自転車」という趣味を一生涯続けていくにはどうしたらいいかという話題,後半は人生のあり方(もちろん自転車絡みで)という哲学的な(?)お話が語られています。

その中でも強く共感したテーマは2点。



■ラクの壁

自転車に載りたくなる理由は人それぞれですが,おいらは,激坂なんかを登って肉体を酷使したときに感じる,妙にさわやかな気持ち(変態?)が好きです。

クルマや自動二輪で登ればすぐにいけるのに,あえて,ひーこら言いながら何倍も時間をかけて自転車で走るのはなぜなのか。

著者は,世の中全部が驚異的に「ラク」になっていく中で,本能的に「もっと体を動かしたい」という衝動が発生しているのではないかと言っています。


移動はクルマ。それもほどんどがオートマチックトランスミッション。上り下りはエレベーターにエスカレーター。水平でさえ“動く歩道”。扉はすべて自動ドアで,その内側は年中エアコン。重い荷物は宅配便。
(中略)
自分では何もしていないのに,時速千kmもの超高速で移動している怖さ。それに比べて20km/hでいいから自分の力で走っている安心感。今の時代,自転車のいちばんの効用はこんなところにあると思うのですが・・・。(p.173~174)

効率とかバリアフリーとか,いろいろあるかもしれないけど,とりあえず歩けるだけ健康で,時間があるときにはなるべく体を動かしていたいと思える一文でした。



■スポーツのあり方について

こんなにスポーツが勝ち負けにこだわるようになったのは,TVや新聞の影響も大きいと思うよ。“スポーツが大好き”という人が,よく聞いてみると“TVでのスポーツ観戦のファン”だったりする。つまり,スポーツは“するもの”から“見るもの”になっちゃった。そうなるとプロセスの気持ちよさなんでどうでもよくて,結果だけが問われる。
(中略)
自分でやらない人は“体にいいかどうか”なんて関係ないからね。自分はソファに寝そべってスナック菓子などをボロボロかじりながら,「こら,しっかり走れ,コノヤロウ」などと無責任なことをやっているワケです。

これも思い当たるなぁ。

自分とはほとんど関係ないのに,TVを通してオリンピック選手を応援して,それでも負けると「だから日本選手はダメなんだ」とか適当なこと言い出しちゃったり・・・。

「アンディはTTが本当に下手だよな」とか言っちゃったり(笑) ごめんなさい・・・ m(_ _)m



斎藤純『銀輪の覇者』

こちらで予告していましたが,ちょうど1週間で読み終わりました。

初めて,自転車をテーマにした小説を読みましたが,予想以上に楽しく読むことができました。

戦前,昭和初期に行われた(もちろんフィクションですが)日本縦断の巨大自転車レースのお話です。

ツールドフランスの黎明期もそうだったようですが,「自転車レース」というもの自体が,まだうさんくさいというか,ちゃんと市民権を得ていない頃の時代設定です。

なので出場選手達も,みんな,ちゃんとしたスポーツマンというよりも,偽名を使っていたり,何かの暗い過去があったり,スパイっぽかったり,もう怪しい連中ばっかりです(笑)

主人公は個人参加だったのですが,レース中に他の選手(3名)に声をかけて,途中からチーム参加扱いとなります(これだけでもビックリですが)。

3名はまったくのド素人だったのですが,チームで走るうちにどんどん上達し,戦略も学び,上位を目指していきます。

いろんな妨害があったり,怪しい人たちの暗躍があったり,自転車小説というよりも普通に冒険小説,ミステリー小説に分類してもいいくらい,いろいろあって楽しめます。

が,最後のほうになると,ものすご~いヒルクライムがあったりして,思わず心拍が高くなってしまいます(笑)

今まで自転車小説は敬遠していたのですが,普通の小説としても,そしてもちろん,自転車好きとしても楽しめる1冊でした。


■「本」カテゴリー内の前後記事
2012年03月04日 | カテゴリ:  | ID: 10272
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