[第6回]ペダルの選び方
当たり前ですが,自転車には漕ぐための「ペダル」が必要であり,それはスポーツバイクであっても変わりません。
んが,平らなペダルしか選択肢がない一般車とは違い,スポーツバイクのペダルにはさまざまなシステムがあり,新たにスポーツバイクを始める人達を悩ませ続けているのです(ってほどではないけど)
どんなペダルシステムがあるの?
スポーツバイクのペダルシステムには,一般的なものだけで,平らなペダル(通称,ヒラペ or デカペ),MTB用のビンディングペダル,ロード用のビンディングペダルがあります。さらに,それぞれメーカーによる方式の違いがありますので,かなり多くの方式が存在しています。
(これ以外にも,ベルトのような物で固定するクリップやハーフクリップなどもあるのですが,おいらは全然分からないので,とりあえずは割愛です)
平らなペダル(ヒラペ)
入門用のMTBやクロスバイクだと,最初からヒラペが付いている場合があります(LGS SIX号もそうでした)。
基本的に一般車のペダルと同じ構造・機能ですが,スポーツバイク用ということで,大きめなギザギザやイモネジが付いていて,シューズが滑りにくいような工夫がされています。
が,調子に乗って脚をグルグル回しまくって,ペダルから落っこちた場合,このギザギザやイモネジが脚(よりによって弁慶とか)に襲いかかってくるので注意が必要です。
ビンディングってなに? どこがいいの?
ロード用もMTB用も基本的には同じで,シューズの底に付けた板(=クリート)を,ペダルにパチンとはめ込んで(格好良く,「ステップイン」と言います。逆に外すのは「ステップアウト」),シューズとペダルを固定するシステムです。
よく,「ビンディングだと『引き脚』が使える!」という雑誌記事を見かけますが,正直言って,おいらのレベルではそこまでは到達できていません(涙)また,ハイレベルなMTBライダーの方々は,引き脚を上手く使ってトルクのムラをなくすことで,路面の悪い激坂を滑ることなく登っていくようですが,これまた,おいらにはできません……。
でも,「どんなに脚を早く回してもペダルから落ちない」というメリットはとても有り難~く感じています。
一般的に,疲労しないための脚の回転数(=ケイデンス)は毎分80~90回程度と言われています。でも,実際にやってみると分かりますが,このケイデンスは一般の人が想像するよりも倍くらい高いケイデンスです。漫画で,脚がぐるぐる回っている表現がありますが,まさにあの感じです。これを,ヒラペでやろうとすると,よほど気を付けないと,足がペダルからずれ落ちて,弁慶なんかを打って涙を流すことになります。ビンディングペダルであれば,どんなに高いケイデンスでも大丈夫ですから,走りに専念することができます。
また,これは,正しいかどうか「?」なんですが,もう,どうしようもなく疲れてしまった登り坂で,最終兵器として「引き脚」を無理矢理使うと,意外なくらい力が残っていて,ぐんぐん登れるときがあります(自動二輪のリザーバタンクのイメージ?)。が,今,よく考えてみたら,こうなる前に「引き脚」が使えていないから力が残っているだけで,下手っぴなおいらだから使える最終兵器な気がしますので,あまり参考にしないでください……。
ロード用ビンディングペダル
シューズの底に巨大なクリートが付いていて,ペダルにはめ込むことでシューズとペダルを固定します。文字で書くとややこしいですが,要するに,スキーのビンディングと同じです(っていうか,TIMEなんかは,スキーのビンディングも作っています)。
はめるときはつま先をペダルにあて,次にかかとに体重をかけて踏み込むと,「パチン」とステップインします。逆に外すときは,足を横に捻ると,「カコーン」とステップアウトできます。まぁ,スキーのビンディングそのものです。
MTB用ビンディングシステムと比較すると,
- クリートがデカイので,固定力が安定している(ガタがない)
- クリートがデカイので,つま先が高い,逆ハイヒール(?)のような状態になるので,歩きにくい(でも,こんな方法である程度解決します!)
- ステップイン,アウトともに,かなりの力が必要です
- 軽さが命のロードバイクなので,シューズもペダルも軽めです
- 反面,シューズもペダルもお値段が高めです(涙)
といった特徴があります。
メーカーでは,シマノ(SPD-SL),TIME,LOOKなんかが有名です。おいらの場合,本当はLOOKのKEOなんかがすごく格好良くて欲しかったのですが,お値段がシマノの倍くらいするので,庶民の味方,シマノの105クラスのSPD-SLです。
MTB用ビンディングペダル
ロード用と同じく,クリートでペダルと固定しますが,MTBの場合,野山を駆け回るため,ロード用のように「歩けないシューズ」ではどうにもなりません。そこで,MTB用は,クリートをすご~く小さくして,シューズの底に埋め込んでしまっています。
トレッキングシューズのように野山も普通に歩けます。おいらの場合,子ども達とサッカーで遊んだり,お買い物に出かけたりもしています。スポーツバイクで遠くまで出かけ,さらにそこで,遊んだり,写真を撮ったりするのに便利なシステムです。
ロード用ビンディングシステムと比較すると,こんな特徴があります。
- クリートが小さいので,固定力が弱い(ガタが大きい)
- ステップイン,アウトともに小さな力で簡単
- クリートが靴底に出っ張らないので,歩行に支障がない
- システムが単純・小型なため両面ビンディングが普通で,中には片面ビンディング+片面フラペという便利ペダルもある
- シューズ,ペダル共に泥で汚れてもちゃんとはまってくれる
- 頑丈さが命のMTBなので,シューズもペダルも重めです
- ロード用に比べれば,若干安いような気がしないでもないです
MTB用も,いくつかのメーカーから出ていますが,ロードの時と同じ理由(悲しい…)で,おいらはシマノのSPDです。片面ビンディング+片面フラペのSPD-M324という便利ペダルをLGS SIX号で使っています。
んじゃ,どのペダルシステムがいいのよ?
これは,個人の能力や遊び方にもよると思いますが,MTBの場合はビンディングでもヒラペでもよく,ロードの場合はビンディングに限るのではないかと思います。
MTBで野山を走ると,坂がきつかったり,段差が大きすぎたりで,足を地面に着くことが多々あります。そんなとき,ビンディングで足が外れないと,そのまま転ぶことになってしまいます。が,一般的にMTBの場合,転んだとしても,相手は自然(土・草・木)で柔らかいし,速度もそれほど出ていませんから,大きな怪我になることは少ないと思います(高速でダウンヒル中に転べば大ケガですが,それはビンディングでもヒラペでも同じです)。
なので,MTBでは,フラペでもビンディングでも,どちらを使っても楽しめるんじゃないかなぁ,と思います。
一方のロードバイクでは,ビンディングは必須に近いと思います。基本的に,より遠くに,より効率的に走りたい,という乗物ですから,高いケイデンス(や引き脚)が必要であり,やっぱりビンディングシステムになるのではないかと思います。
ただ,ロードだからと言ってロード用ビンディングを使う必要はなく,MTB用も問題なく使うことができます。ロードに乗って遠くに行き,行った先で遊んだり,写真を撮ったりするには,MTB用ビンディングの方がラクチンです。
どのペダルシステムで始めるのがいいの?
おいらは,最初は安いヒラペで始めた方が無難な気がします。特にロードバイクの場合,極端に高いサドル,とても握れそうにもないハンドル,異常に軽い車体など,初めて乗ると,あまりの乗りにくさにぶったまげることかと思います。
それに加えて,足を固定するビンディングペダルにしてしまうと,不安が倍増ですし,実際に立ゴケや落車をして大ケガするかもしれません。
おいらの場合,以下のように,徐々に難しい(ってほどではないですが)ペダルシステムにステップアップしてきました。
- 06年 6月:MTBのLGS SIX号にヒラペでスポーツバイク入門
- 06年12月:SPDペダルに換装(片面SPD+片面ヒラペのPD-M324)Nikon D70 + TAMRON 17-50mm F2.8
- 07年 4月:ロードのLGS RHC号にPD-M324を流用してロードバイク入門Nikon D70 + TAMRON 17-50mm F2.8
- 07年 5月:SPDのロード用モデルPD-A520に換装Nikon D70 + TAMRON 17-50mm F2.8
- 08年 5月:SPD-SLのPD-5610(105クラス)に換装Nikon D70 + TAMRON 17-50mm F2.8
という険しい(?)道のりを歩んできました。
LGS RHC号でロードを始めたときは,「あ~,LGS SIX号でビンディング習っておいてよかった。こんな乗りにくいロードで,ビンディングまで分からなかったら,とても乗れねぇよぉ…」と思ったものでした。
いずれにせよ,MTB用とロード用ビンディングに互換性はないですから,鞍替えしようとすると,ペダル・シューズ両方を買い換える必要があります。下手すると3~4万円もかかりますから,自分のスポーツバイクスタイルが分かるまでは,この意味でも,ヒラペの方がいいかもしれません。
ビンディングペダルでの走り方
今では,ビンディングで走ることはなんとも無いことですが,最初にLGS SIX号にビンディングペダルを付けて公道に出たときは本当に緊張しました。家の前の壁に手を付き,何度も何度も着脱を繰り返してから,そぉ~っと公道に出ていきました。
慣れてしまえば,なんともないビンディングペダルですが,最初のうちは,いくつか気を付けておかないと,立ちゴケや落車などの怪我をしてしまうおそれがあります。以下,おいらが気が付いた点をいくつかまとめてみました。
- 外す足を決めておく
- 信号などで止まるときには,左右どちらかの足をステップアウトして地面に立つ必要があります。どちらの足を外すかは人によって色々のようですが,多数派は「左足」のようです。右足を出すとダンプカーに踏まれそうですし,道路の左端には縁石があったりするので,足をおろしやすいというメリットもあります。
一方で,少数派ながら「右足」党の方々もおられ,実際にたまに見かけます。左足で立つと右側は無防備状態になりますから,仮に左から強風でも吹いてバランスを失うと,左でなく,必ず車道である右側に倒れることになります。なので,最初から右足で立っておこうというのが右足党の方々の主張であります。
おいらは,最初の頃は右足,2ヶ月くらい経ってから左足に鞍替えしています。最初の頃は,信号が急に変わったときなど,どっちの足を外すかで迷ったりして危ない場面もありました。自分の中で,外す側の足を決めておいた方が安全と思います。
- 走り出しは,なるべく足元を見ない
- 最初のうちは,どうしても慣れないので,はめるときに足元を見がちです。でも,青信号で交差点を発進するときは,後続自動車の左折,対向自動車の右折のほか,歩行者や他の自転車などがこちらに向かってきたり,と色んな変化が目の前で起きます。
こんな時に,足元(ペダル)を見ていては危険きわまりないので,はまる・はまらないに関わらず,少なくとも交差点は通過してしまいましょう。ステップインできてなくても,反対側の足だけでも走れますし。そのうち,足元なんか見なくても,一発でパチンとステップインできるようになりますのでご安心を!
- ロードシューズの裏はツルツル
- 上述の「走り出し」とも関係しますが,ロードシューズの裏側はカーボンなんかでできていてツ~ルツルなので,ペダルに正しくステップインしていないうちに力をかけると,ズルッと滑ってものすごく危険です。おいらは,シューズを買ってショップを出た直後に,これをやって,弁慶を擦り剥きました(激痛) 一発でステップインできなかったのが悪いのですが,そもそも,靴底がツルツルすぎるのがいかんのです(多くのMTBシューズの裏はゴムですから,こうはなりません)。そこで,靴底に使用済みタイヤチューブを切って貼り付け,グリップを持たせることで対策しています。この対策実施以降,一度も滑り落ち事故は起こしていません。ぜひ,お試しを!
- はずすタイミングはお早めに~
- 最初のうちは,クリートを外すのに手間取ることもありますから,信号が赤であれば,早い段階から外してしまうのがいいかと思います。ただ,外した後,ペダルに足を乗っけていると,いつの間にかまた入ってしまうことがあります。特にMTB用ビンディングは簡単にステップインしてしまいますから,要注意です。おいらは,いつも,ペダルを裏返して軸に乗っけて空走しています。だから,ペダルの裏側が傷だらけになっちゃうんだけど……。
それでは,安全に気を付けて,すばらしきペダルライフを!(っていうのも変だけど)
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