ミノウラのワンタッチカメラマウント「VC-100」
自転車に乗らない人から見たら,まったく使途不明のパーツです。
SONY NEX-5N + E30mmここのところ,デジカメ動画の記事が続いていました。
それに伴い,「どうやって自転車に車載しているの?」と,何人かの方からお尋ねをいただいていました。
以前は完全自作の車載方法を採用していたのですが,今年のFHCから,きわめて安直な市販品装着方法に変わっています。
あんまりに簡単な方法なので,本当に大丈夫なのか自分でも心配だったのですが,FHCでも鎌倉界隈のポタでも上手く運用できているので,ここで紹介することにしました。
自作型マウントの課題
自作型マウントは,当フォトポタ研究所が2008年に開発した(笑),ハンドルバー(ステムも同様)に小型カメラをマウントできるシステムです。(登場してすぐに改良版も出していました。こっちの方が説明が分かりやすいかも)
まず,「U字型ボルト」をハンドルバーに通して平板とナットで固定します。U字ボルトの余長部分に,お好みのカメラ雲台を装着して完成です。
U字ボルトの半径をハンドルバーやステムの外径に合わせたサイズにするのはもちろんですが,肝心なのは,ボルトの径をカメラ雲台のねじ穴とサイズを合わせることです(普通はUNC1/4インチサイズのはず)
とても原始的な構造です(笑)
Nikon D70 + TAMRON 17-50mm F2.8この方式は,見た目こそ悪いですが(笑),そこそこ頑丈にカメラを固定することができるので,長らく,Shiro家の標準車載方式として採用され続けていました。
ただ,以下のような欠点があることも分かってきました。
- 【1】装着が面倒くさい
- 最初にU字ボルトをナットで固定する際にはスパナが必要です。また,そこからさらに雲台を取り付けるので,朝「急にやりたくなった」という時にはちょっと間に合いません。
- 【2】カーボンハンドルバーに装着できない
- Uボルトの断面は真円なので,ハンドルバーには「面」ではなく「線」で接触します。実際には,ハンドルバーとUボルトの半径・曲率がハンドルバーと完全には一致しませんから,「点」接触に近い状態です。固定力を得るために強い力で締め付けようとすると,接触面(点)にはキツイ圧力がかかることになりますので,カーボンハンドルバーには装着することができませんでした(いつもステムに付けていました)
- 【3】重い・・・
- U字ボルト・平板・ナットはそんなに重量はないのですが,雲台の重量がが意外とかさみます。おいらは,クイックシュー式の自由雲台では最小に近いVelbonのQHD-41Qにしてみましたが,それでも全部で250g近くありました。ハンドルバー全体とほぼ同じというのもいかがなものかと・・・
特に【1】が問題でした。
家で装着するのにも,出先で外すのにも工具が必要というのは,やっぱり面倒です。
しかも,アーレンキーならまだしも,スパナを持ち歩くロード乗りは皆無でしょうから,汎用性もイマイチ低いです。
コレが理由で,だんだん,本システムは使わなくなってきていました・・・。
(以前,車載したCanon IXY Digitalが振動で壊れた,というのも大きいですが)
そして,最近になって,雑誌を立ち読みしていたら面白そうなアイテムがミノウラから登場していることを知りました。
それが,今回の主役である,ワンタッチ脱着式カメラマウント「VC-100」です。
ミノウラ製,ワンタッチ脱着式カメラマウント「VC-100」
VC-100は,名前のとおりワンタッチでハンドルバー(やステム)に取り付けることができるカメラマウントです。
薄々,想像つくとは思いますが,輪っかを引っ掛けてレバーでパチンです。
SONY NEX-5N + E30mmVC-100は取り付け可能サイズによって以下の2種が用意されています。
型式 | クランプサイズ |
---|---|
VC-100-S | Sサイズ (22~29mm) |
VC-100-M | Mサイズ (28~35mm) |
おいらのネオモルフェは32mmですので,Mサイズ,VC-100-Mを購入しました(1100円なり)。
取り付けの原理は,食料品貯蔵用のポットのように,フックをレバーに引っ掛けて,レバーを倒せばロック完了する仕組みなのですが,文字で書いても全く分からないですよね(笑)
珍しく,動画で紹介してみましょう。
まずは,取り付け方です。
こんな風に,ワンタッチでパチンと装着することができます。
装着に当たっては,一度,軽く装着してみてから,調整ボルトを締めこむことで適当な締め付けトルクにすることができます。
そして,一度調整してしまえば,次回からは,レバーをパチンとするだけで着脱が可能になるというわけです。
たた,カーボンハンドルバー場合,きつく閉めすぎて「ボキッ」となると死んでも死に切れないほど悔やむことになるので(オーバーか?),念のため,緩めに装着してから,アーレンキーで適当なトルクになるようにして使っています。
VC-100には,ハンドルバーの傷防止とすべり防止のために透明なゴムが付いてくるのですが,こいつがなかなか優秀で,結構な厚さと粘り気を持っています。
なので,締め付けは本当~に緩いトルクで十分な固定力を得ることができます(2Nmくらい)。手締めでも大丈夫なくらいです。
これで懸案だった,カーボンハンドルバーへの取り付けも可能になりました(^^)
イマイチ見にくいですが,こんな風にマウントされています。
SONY NEX-5N + E30mm
1ヶ月使ってみての感想
FHC直前に購入してFHCで本番デビュー。その後,一ヶ月ほど使ってみた感想を,従来の自作マウントとの比較でまとめてみました。
項目 | VC-100 | 自作マウント |
---|---|---|
自転車への着脱のしやすさ | とても簡単です。 工具無しで,手だけでも装着できるので,朝起きてから急に動画撮影がしたくなるという緊急事態(?)に遭遇した場合も対応可能です。 アーレンキーがあった方が安心ですが,普通の自転車乗りならいつも携帯しているはずですから安心です。 FHCの時だって,急に動画撮影しちゃったくらいですから(^^) | ちょっと面倒です。 取り付けには,ナットを締め付けるためのスパナが必要ですし,傷をつけないように,向きがまっすぐになるように取り付けるにはちょっとした手間が必要になります。 |
カメラの装着のしやすさ | 取り付けが面倒です。 カメラをVC-100に取り付けるためには,毎回,三脚のネジ穴にあわせて,ぐるぐる回して固定する必要があります。 ツーリングやイベント時,普通にスナップ写真を撮ることができなくなってしまいます。 | 簡単にすることができます。 「クイックシュー型の雲台にすれば」という条件付ですが,カメラの着脱はワンタッチにできて,とても便利です。 |
安定感 | 意外なほど安定している。 システム全体がシンプルで背が低いため,カメラのブレがとても少なく,安定しています。チャチっぽい造りからは意外ですが,超安定しています(笑) | ちょっと不安定。 クランプの上に雲台を乗せ,さらにそこにカメラを装着しているので,システム全体の「背丈」がかなりあります。これにより,振動時に前後左右に揺れるモーメントが大きくなってしまい,ちょっとした段差でもガタガタ揺れ続ける感じがあります。 VC-100とは真逆に,見た目はごついけど,ちょっと不安定です。 |
重量 | かなり軽いです。 クランプ自体が軽量ですし,別途,雲台を用意する必要が無いですから,ちょうど100gしかありません。ヘビー級サイコンのEdge705(マウント込み)とあまり変わらないです(笑) | かなり重いです。 クランプ自体は軽量ですが,雲台を上乗せする必要がありますから,おいらの雲台(QHD-41)では合計250gもありました。 |
意外だったのは,動画の安定感です。
見るからにチャチっぽい造りからは想像できない,シンプルさゆえの安定感があります。
実際に,同じコース(源氏山→北鎌倉のDH)を走ったとき動画で比較するとこんな感じです。
■VC-100による車載
■自作マウントによる車載
自作マウントの方は,ちょっとした段差による振動が長く続いている感じです。
まぁ,どちらにしても,最初の頃に,光学手振れ補正の無いIXY Digitalで撮影していた頃とは雲泥の安定性ではありますが(^^)
最後に注意点
購入前の予想(ネットの評判含む)に反して意外と使えることが分かったVC-100ですが,ちょっとした注意点もありますので,紹介しておきましょう。
カメラ側のネジの飛び出し量が少ない
購入時の状態では,カメラ用のネジの飛び出し量が少ないように思えます。
このネジの突き出し量が,購入状態ではちょいと短い。
SONY NEX-5N + E30mmカメラを強く固定しようとしてグイグイ回したのですが,ネジの挿入量が少なすぎて,一度なめてしまいました。
最近のデジカメは,三脚用のネジ穴が金属ではなく,エンジニアリング・プラスチックでできていることが多いので,注意が必要です。
ただ,これは解決方法を見つけました。
VC-100のカメラ用ネジは,小さなイモネジで固定されているので,こいつを緩めて,突き出し量を増やしてやることができます。
「カメラ固定用ネジ」を固定するネジを緩めます(笑)
SONY NEX-5N + E30mmイモネジを緩めた後は,こうやって,突き出し量をを適切な長さに調整します。
SONY NEX-5N + E30mm
やっぱりコンデジ専用
マウント用ネジは一般的な1/4インチですから,コンデジのほか,ビデオカメラ,ミラーレス,一眼レフまで,つけようと思えばなんても装着することができます。
しかし,もともと一体型で三脚用ネジ穴でほぼ重量バランスするように設計されているコンデジやビデオカメラと違い,ミラーレスや一眼レフは,普通はレンズ側が圧倒的に重く,三脚穴から見れば重心ははるか前方にあります。
やってできないことはないけど,絶対にやめたほうがいいです(笑)
SONY NEX-5N + E30mm重心が大きくずれた機器を支えるには,VC-100では明らかに剛性が不足していますから,車載はまったくオススメできません(落下するかも)。
もっとも,VC-100に限らず,どんなに頑丈なマウントを作っても,重いレンズを付けた一眼レフやミラーレスを固定し,安定した動画撮影をすることは,ほぼ無理な気がします。
まとめ
カメラの着脱が若干面倒くさいという課題はありますが,必要最小限の構成で十分な質の動画を簡単に撮ることができる恩恵は大きいです。
例によって,カメラ本体に与えるダメージは小さくないでしょうから,毎日動画撮影しまくるのは考え物ですが,耐衝撃のデジカメ(TX10さまだ)を使うなど,自己責任で楽しんでいけそうです。
サイコンホルダーに続き,またも自作パーツが既製品に置き換えられてしまうのが若干寂しい感じもしますが,やっぱり,専用に作られた既製品の便利さを思い知った今日この頃です。
それではまた~
次回は,少しだけ面白い動画を紹介予定です!
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