【原因解明!】超滑らか回転クランクの謎
分解直後のBBの様子。う~む,ほとんどグリスが無い・・・。
Nikon D90 + Nikkor Micro 60mm F2.8先日の土砂降りライド後のメンテナンスで,最初にインストールしたときとは別人のように軽快に回るようになったクランク。
使用から3年を経て,ようやくTOKENのBBが心を入れ替えたか,と喜んでいたのですが,どうもそう単純な話ではなさそうです。
果たして,その心変わりの原因は?
ざっくり言うと・・・
- グリスが切れた(or 切れる寸前の)BBはとても良く回る
- もちろん,パーツの寿命には悪影響がある
- シールドベアリングはメンテナンスフリーではない
- シールドベアリングのメンテナンスはそんな難しくは無い
- でも,シールを剥がすのがちょっと難しい(細いドライバー,針などで)
- ハブフリーグリスはダメ!(すぐに流出してしまう)
ベアリングが一番回るときが,一番危ない?
595号では当初はUltegraのBBを使ってましたが,3年前からTOKENのTK877TBTというBBを使っています。
こいつは,セラミックのシールドベアリングを使っています。
おいらは,シールドベアリングについては,なんとなく「メンテナンスフリー」なのかな思っていて,実際,そのように紹介されている本やネット記事を見かけていました。
しかし,よくよく調べてみると,普通のベアリングと同様に内部にはグリスが塗られていて,そのグリスが流出しにくいように「蓋」がされているだけだということが分かりました。
この蓋は「完全密封」という強固なものではなく,ゴム製の輪っかが,ベアリングの側面にぴたっと張り付いているだけで,普通の使用ではまずまずのシールド効果があるものの,水没などのキツイ状況では内部のグリスが流出してしまうとのことです。
グリスは金属同士(やセラミック)が擦れあうときの摩擦を減らし,表面を保護しますが,その反面,粘性を持っているので回転時にはある程度の抵抗を発生させてます。
なので,ベアリングが一番良く回るのは,グリスが枯渇する直前だそうです。
「お~,BBが良く回るぜ♪ 縁起がいいから日本縦断でも行くか!」なんて気合が入ってしまうと,早晩にグリスが枯渇して,ベアリングが傷んだり焼きついてしまったりするかもしれません。
危ないところでした・・・(もともと日本縦断はやらないけど)
BBベアリングのグリスアップに挑戦!
さっそく,TOKEN BBのシールドベアリングを分解清掃し,グリスアップすることにしました。
もちろん初めての作業ですが,以下の手順でやってみました。
【手順1】BBのキャップを外す
TOKEN BBはベアリングの外側に,黒いプラスチックキャップが付いているので,これを外します。
BBのキャップは簡単に手で外せます。
Nikon D90 + Nikkor Micro 60mm F2.8特に難しいことはありませんでしたが,手がグリスで汚れるので,カメラを汚さないようにするのが大変です(笑)
【手順2】BBを外す
キャップを外せばベアリングにアクセスできるのかと思っていたのですが,全然ダメなので,BBをフレームから外します。
なので,本当は手順1と手順2は逆にすべきです(^^;
BBを外します。回転方向に気をつけましょう!
Nikon D90 + Nikkor Micro 60mm F2.8
【手順3】ベアリングのシールを剥がす
ここが最大にして,唯一の難しい工程。
ベアリングのシールは柔らかいゴムの輪っかでした(製品によるのかもしれませんが)。
普通のドライバーなんかでつつくと破損してしまうそうです。
ベアリングの「シール」を剥がします。今回は超精密ドライバーでしたが,針の方がいいかも。
Nikon D90 + Nikkor Micro 60mm F2.8今回,おいらは先が1mmくらいしかない,細~いドライバーを使ってうまく外せましたが,それでもギリギリ。
裁縫用の針とか,千枚通しなどの方がより良い気がします。
【手順4】ベアリング内部を脱脂する
予想通りというか,予想以上というか,内部にはグリス成分はほとんど残っていませんでした。
念のため,このタイミングでBBを空回ししてみて様子を見てみます。
べらぼうに良く回ります。
もともと薄かったグリスを,さらにクリーナーで薄めているので,まさに「グリス枯渇寸前BB」の状態になり,とても軽く回っていました。
が,同時に金属音もキンキン鳴っていて,「このまま走ったら絶対にダメだろな」という感じもします・・・。
パーツクリーナーで完全に脱脂し,さらに乾燥させました。綺麗~(^^)
Nikon D90 + Nikkor Micro 60mm F2.8動画撮影後,残りは少ないですが油脂分はわずかにありそうなので,パーツクリーナーで清掃し,完全に乾燥させます。
そして,このタイミングでBBを空回ししてみると・・・
あぁ,やっぱり。
全然回らないじゃん・・・。
あのまま乗り続けていたら,遅かれ早かれこの状態になっていたのかもしれませんね。
【手順5】グリスを塗りこむ
どのグリスを入れるか悩んだのですが,普段使っている「DURA-ACEグリス」「FINISHLINEテフロングリス」などは粘度が高くて,イマイチ気が進みません。
そこで,購入以来ほとんど使っていない,シマノの「ハブグリス」を入れてみることにしました。
シマノのハブグリスは粘度がだいぶ低くて,なんとなく回転が軽くなりそうな気が?
今回は,シマノのハブグリスを塗りこむことにしました。
Nikon D90 + Nikkor Micro 60mm F2.8FINISHLINE用にはグリスガンを持っているのですが,ハブグリスは普通の壷に入っているので,手をグリスまみれにしながら塗りこみました。
あぁ,カメラが・・・。
塗りこみ完了! 両手はベタベタだ!
Nikon D90 + Nikkor Micro 60mm F2.8
【手順6】シールする
グリスを塗り終わったら,元通り,シールしてあげます。
と言っても,ベアリングの両サイドに「ペタ」っと置くだけで完成です。
シール完了! といっても,ペタッと置くだけですが(^^;)
Nikon D90 + Nikkor Micro 60mm F2.8ウェスで包んで,はみ出たグリスを拭きつつ,封印をしっかりしておきます。
【手順7】BBのキャップにもグリスを
TOKEN BBはベアリングの外側にプラスチックのキャップがあるので,ベアリングとキャップの間にもグリスを入れておきました。
これで,耐水性がちょびっとは向上したのでは?
キャップ(左の黒いやつ)との隙間にもグリスを塗っておきましょう。
Nikon D90 + Nikkor Micro 60mm F2.8
【手順8以降】あとは道なりに進んでください
あとは,BBを戻す,クランクをつける,などの作業を普通にやればOKです。
グリスアップ後のクランクの回転状況はこんな感じ。
土砂降り後の,べらぼうに軽い回転と比べると,少し重くなりました。
回転自体は似たようなものですが,止まり方がぜんぜん違います。
しかし,これが通常状態なんだろうな,と思いますし,これでも購入時に比べればかなり軽く回っています。
まとめ
なぜか夜の10時から作業開始して,完了したのが2時ごろ(途中30分仮眠・・・)。
やり始めると,両手が油まみれになりますから,なかなか途中で止められません。
やるなら,作業時間(と睡眠時間)がたっぷり確保できる状況でやったほうが良いでしょう。
今回のトラブル・作業から学んだ教訓は以下の通りです。
- シールドベアリングは「メンテナンスフリー」ではない
- グリスが詰まったベアリングは回転に粘性があり,グリスが枯渇する寸前のベアリングが一番良く回る
- シールドベアリングのメンテナンスは難しくはない
- ただし,「シール」を剥がすときだけは細心の注意が必要
振り返ってみると,TOKEN BBに換えてからは,富士ヒルクライム2012,地獄の藤沢→甲府,そして今回の,土砂降り裏ヤビツというように,かなりキツイ雨に3回遭遇しています。
今まで3年間で一度もメンテナンスしたことがありませんでしたから,この3回の雨によってグリスが流出してしまったのでしょう。
年に1度,自転車全体をばらすフルメンテ(オーバーホール)をやっていて,毎年,それなりに発見があるのですが,今後はベアリングのメンテナンスも点検項目に入れたほうが良さそうです。
完成状態。でも,これからクランクをグリス塗りながら復旧しないと・・・。
Nikon D90 + Nikkor Micro 60mm F2.8今回の件では,いろいろな方からご意見を頂きました。
特に,シールドベアリングのメンテナンス必要性についてご意見いただいたcressonさん,使用グリスなどにご助言いただいた_toshiさん,ありがとうございました!
いつもながら,みなさんあってのフォトポタ日記です(^^)
あぁ,今回も物を壊さないですんだ・・・。
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