爆音解消! MV32TのDT-SWISS 240Sハブメンテ結果
これがなんだか分かる人は,かなりのハブマニア(?)でしょう。
Nikon D70 + Nikkor 35mm F2D2月に書いたReynolds MV32T ULの紹介記事では,MV32Tのリアハブが静かなことについて触れ,「無音ハブがうれしい~♪」と喜んでいました。
しかし,それから数回MV32Tに乗るうちに,ハブからの空転音(フリーのラチェット音)が大きくなってきました。
そして,先日の初ヤビツアタックでの,12kmに亘るダウンヒルでは,無音どころか爆音に成長していました。
今回は,MV32Tの爆音治療について紹介します(^^)
MV32Tの爆音症状
我がフォトポタ研究所に持ち込まれた,爆音MV32T。
まずは,治療前のMV32Tの症状から見て(診て?)いただくことにしましょう。
我が家には3つのホイールセットがあります。一つはもちろんMV32Tで,もう一つはカンパのSHAMAL,そして,完成車に付いてきた激重A-CLASSです。
これらのラチェット音を聞いてみましょう。
A-CLASS AKX2.0
まずは,A-CLASSから。
マイクの感度や再生されているPCのボリュームに依存してしまいますが,いわゆるママチャリとまったく同じ音量・音質と思っていただければ大丈夫です。
Campagnolo SHAMAL ULTRA
A-CLASSを標準として,次は,爆音で有名なカンパのSHAMALのラチェット音をお聞きください。
確かに,でかいですよね。
この音が背後から迫ってきたときは,恐怖感を感じますね。(ディスクホイールの「ゴゴ~」よりはマシですが)
Reynolds MV32T UL (今回の患者さん)
そして,患者であるMV32Tの症状をお聞きください。
げは~! どこが「静かでうれしい♪」でしょうか。
爆音で有名なカンパの何倍もうるさい状態です。「爆音」の上は何ていうのか分かりませんが,とりあえず,「猛音」くらいにしておきましょう。
しかし,うるさいですよね・・・。
症状分析と対処方針確定
患者の症状は「ハブから猛烈な音がする」というものでした。
購入当初は「無音」で,ちょっと乗ったら「猛音」ということですから,ハブの内部で何か悪いことが起こっていることは間違いないです。
こんなちょっと乗った(100kmほど)でハブが壊れることはないでしょうから,考えられるのは,グリスが不足しているまたは劣化しているという症状。
いずれにせよ,ハブをばらす必要があります。
しかし,我がフォトポタ研究所ではホイールのハブ部分は1度もいじったことがなく,ばらし方も分からないし,そもそも,素人(研究所なのに)がいじっていいのかも分からない状況。
そんなある日,FFWDのホームページに,DT-SWISSの240Sハブの分解掃除の記事を発見しました! (こちらであります)
MV32Tは同じ240Sハブを使っているのですが,FFWDのページで紹介されていた240Sの分解掃除は,笑ってしまうくらい簡単な方法でした。
詳細は次節で説明しますが,簡単にいえば「手ではずして,手で戻す」だけです。
シールドベアリングを使っているおかげかもしれませんが,ラチェット部分の掃除だけなら,工具不要,所要時間5分で完了できるそうです(さすがに5分ってのは,誇張のような気もしますが・・・)
ハブメンテ手術開始!
前述の通り,DT-SWISSの240Sハブは,簡単にラチェット部分を掃除することができます。
それでは,順を追って,ハブ分解掃除手術の様子をご紹介します。
【手順1】フリーボディを外す
軍手でスプロケを掴んでひっぱると・・・。
Nikon D90 + TAMRON 17-50mm F2.8あっさりと,スプロケごとハブボディーが取れます(驚!)
Nikon D90 + TAMRON 17-50mm F2.8スプロケットを付けたまま,軍手で掴んで,ムギュ~っと引っ張ります。
すると,フリーボディがスプロケットごと外れます(驚!)
工具なし,作業時間数秒で,ラチェット部分とご対面です。
ラチェットギアとご対面になります(速!)
Nikon D90 + TAMRON 17-50mm F2.8
【手順2】劣化したグリスを除去する
多くのメンテナンス本では,この段階で「汚れたグリスを除去しましょう」などと書かれていますが,ごらんの通り,我がMV32T(240S)には,ほとんどグリスらしきものが残っていませんでした。
ラチェットギアを外して,様子を見てみます。
Nikon D90 + TAMRON 17-50mm F2.8グリス無し,よし!! (いや,良くない)
Nikon D90 + TAMRON 17-50mm F2.8フリーボディにもグリス無し!
Nikon D90 + TAMRON 17-50mm F2.8ハブにもグリス無し! ひどいもんじゃ・・・。
Nikon D90 + TAMRON 17-50mm F2.8ラチェットの内部の空洞には,ほんの少し,黄色いグリスが残っていましたが,肝心の,ラチェット同士の接触面には何もありませんでした。
これじゃ,猛音がするわけだよ・・・。
まぁ,おかげで,クリーニング作業はほとんどいりませんでしたが(笑)
変化無いけど,ラチェットを掃除しました(^^)
Nikon D90 + TAMRON 17-50mm F2.8
グリスを塗布する
いつものDURA-ACEグリスにしようかと思ったのですが,こいつはかなり粘度が高いグリス。
ラチェット部分は,空回りしているか思えば,ガチッとかみ合って駆動するときもあります。
よく分からないのですが,あんまり粘度が高いグリスを塗布してしまうと,この切り替えが遅くなり,「踏み込んだら少し空回り」なんてことになりそうな気がしました。
そこで,普段はあまり使っていない,FINISH LINEの「プレミアムテフロン」を使うことにしました。DURAグリスに比べるとかなり粘度が低い,セラミックグリスです。
グリスの注入は,手でやるとベットベトになるので,ガンを使ってチビチビとやりました。
珍しく,FINISH LINEを使いました。ガンでちびちび塗ります。
Nikon D90 + TAMRON 17-50mm F2.8塗りすぎたか・・・?
Nikon D90 + TAMRON 17-50mm F2.8
【手順4】組み立てる
バラした時の手順の反対ですので,例によって,軍手でスプロケを持って,グイッとホイール側に押し込んで完了です。
所要時間数秒です。
しかし,こんな構造でばらけたりしないのかね・・・?
手術の効果(^^)
ふつうは15分で終わる手術でしたが,写真を撮ったりしているうちに,30分もかかってしまいました。
そして,この大手術(?)の結果は,下の動画をご覧ください。
むほ~,完全に無音!!
最初は,グリスの偏りがあったようで,駆動方向に回すと半回転くらい空回りしてしまいました。
が,1分くらい空転させていると,グリスが馴染んでくるようで,無音状態を維持しつつも,駆動をかけるとすぐに力が伝わります。
また,動画にあるとおり,軽量ホイールで慣性が小さいのですぐに減速しますが,ラチェットが滑らかになったおかげで,最後の最後までしぶとく回り続けます。だいぶ軽くなったみたいです。
手術は大成功です!!
Save our hubs!!
今まで,ハブの音が多少大きくても,「しっかりラチェットが効いている証拠だ」と誤解していました。
しかし,ラチェットの構造を考えれば,猛烈な音がしているということは,必要な潤滑がされていないことに他なりません。ハブの悲鳴です。
今回は早めに気が付いてよかったですが,この状態が何年も続いていたら,結果は明らかだと思います。
ラチェットギア。これがオイルレスで,ずっと擦られ続けていたら・・・。
Nikon D90 + TAMRON 17-50mm F2.8おいらの,MV32Tは年式落ちモデル。飛ぶように売れるシマノやMAVICのホイールとは違い,下手したら,長年倉庫で眠っていた可能性もあります(泣)
また,元メーカーのDT-SWISSは,「こんだけ簡単にしてやったんだから,自分でメンテしてね」という思いもあるのかもしれません。
いずれにせよ,猛音を発しているハブは,まずはグリスアップ手術を考えてあげましょう!
おしまい。
【おまけ1】
どのグリスを使ったらいいのか,いまいち良く分からなかったのですが,今回は,比較的粘度の低い「プレミアムテフロン」グリスを使ってみました。もし,「こっちの方がいいぜ!」というご推奨銘柄をご存知の方がいらしたら,ぜひご教示をお願いします~!
【おまけ2】
あ,まてよ?
我が家には,猛音とまではいかないまでも,爆音を発しているホイール(ハブ)があったな。ひょっとすると,あいつも・・・。(つづく)
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