【健康相談室】SHAMALの爆音ハブ治療

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クリーニング後のSHAMALハブ。男っぽくて(?)妙にかっこいい。

クリーニング後のSHAMALハブ。男っぽくて(?)妙にかっこいい。

Nikon D90 + Nikkor 35mm F2D

今日のお悩み相談は,神奈川県在住のShiro妻さんから。

「夫が夜中に枕元でSHAMAL ULTRA 2way-fitを空転させるうのですが,そのラチェット音が気になって眠ることができません。」

これはまた,深刻なお悩みですねぇ。

カンパといえば爆音」というのは,サイクリストの間では半ば常識化している難病ですから,Shiro妻さんは,イヤーウィスパーを装着するか,旦那さんに夜中にSHAMALを回すのをやめてもらうのが良いでしょう。

(ふつうは後者を勧めると思うが・・・)

SHAMALも無音化治療(^^)

冒頭の小話は放っておいて(笑),本ブログ内の紹介記事へ前回のMV32T無音化手術に引き続き,今回はカンパSHAMALの静音化に取り組んでみることにしました。

まずは,SHAMALの症状についておさらいしてみます。

着手したのが,夜中の11時頃(パジャマだし)ですので,そうっと回してみることにしましょう。



A-CLASSのラチェット音

前回同様,我が家のハブ騒音測定標準であるA-CLASS AKX2.0のラチェット音をお聞きください。

マイクの感度や,再生PCの音量ボリュームに依存してしまいますが,一般的なママチャリと同じ音量・音質と思っていただければ間違いないです。



カンパ SHAMAL ULTRAのラチェット音

どうぞです。

デカイです(笑)

治療前のMV32Tよりはマシですが,これを枕元でやられたら,我ツマでなくても,落ち着いて安眠することは難しいでしょう。



治療情報の収集

SHAMALには,わりと厚い取扱説明書が付いてきました(MV32Tは皆無でした・・・)が,よく見ると5カ国語で書かれており,実は,5分の1の分量しかありません。

そして,中身についても,タイヤの着脱くらいしか書かれてなく,ハブの扱いは「専門家にみてもらってね♪」としか書いてありません。

そこで,しょうがないのでカンパのサイトを本国も含めて探してみたのですが,どこを探しても,ハブの分解方法が見つかりません。

唯一の収穫は,ハブの構造が書かれている「パーツリスト」です。

カンパのパーツリスト図。コレを元に分解してみましょう(多少不安だけど・・・)

カンパのパーツリスト図。コレを元に分解してみましょう(多少不安だけど・・・)



本来はスモールパーツを注文するための書類ですが,まぁ,これでハブの構造も分かるので,チャレンジしてみることにしました(夜11時&パジャマですが・・・)。



治療の様子

結論からいうと,「MV32Tほど簡単ではないけど,特に難しくもない」手術でした。

たぶん,スプロケまで外す必要は無いと思うのですが,清掃ついでにスプロケを外したところから作業開始です。

それでは,順を追って説明しましょう。



【手順1】反フリー側のナットをはずす

QR(クイックレリーズ)シャフトが通る穴をよく見る,6角形の穴になっていることが分かります。

ハブの両側の,この穴に5mmのアーレンキーを差し込み,反時計回りになるように力を加えます。

5mmのアーレンキー2本で,左右のエンドボルトを緩めます。

5mmのアーレンキー2本で,左右のエンドボルトを緩めます。

Nikon D90 + Nikkor 35mm F2D

結構,固いトルクで締めてありますので,ケガをしないように,軍手をしましょう。ハブの手術中に,自分までケガをしてしまうと,大変なことになります。

すると,反フリー側のナットが緩むかと思います。妙にピッチの細かいナットですが,ぐるぐる回して外してしまいます。

ちょいと固いですが,こんな風に外れるはずです。

ちょいと固いですが,こんな風に外れるはずです。

Nikon D90 + Nikkor 35mm F2D



【手順2】キャップ(名称不明)を外す

残念ながら手順1だけでは,患部であるラチェット部分には会えません。

次なる手順は,同じく反フリー側に付いているキャップ(名称不明)を外すことです。

3mmネジで緩み止めしてあるので,アーレンキーで緩めちゃいます。

3mmネジで緩み止めしてあるので,アーレンキーで緩めちゃいます。

Nikon D90 + Nikkor 35mm F2D

こいつは,3mmのイモネジで緩み止めしてあるので,こいつを先に緩めます。

すると,キャップを手で回せるようになるので,こいつもグルグル回して外してしまいます。

イモネジを緩めた後は,手でクルクルとキャップを回して外しちゃいます。

イモネジを緩めた後は,手でクルクルとキャップを回して外しちゃいます。

Nikon D90 + Nikkor 35mm F2D



【手順3】フリーボディーを引き抜く

これで,ようやく反フリー側の固定機構はなくなりますので,フリーボディーを引き抜くことができます。

患者の患部(ラチェット部)はこんな感じでした。

ほげぇ~,汚いラチェット! 海苔の佃煮のようなグリスが・・・。

ほげぇ~,汚いラチェット! 海苔の佃煮のようなグリスが・・・。

Nikon D90 + Nikkor 35mm F2D
ハブ側もドロドロです・・・。

ハブ側もドロドロです・・・。

Nikon D90 + Nikkor 35mm F2D

き,汚い・・・。

まったくグリスが残っていなかったMV32Tとは異なり,黒ずんだドロドロの物体が付着していました。

もちろん,劣化したグリスなんでしょうけど,とても潤滑の役目は果たしてなさそうです。

ラチェットの機構は,MV32Tが「臼」みたいな形状だったのに対し,SHAMALは「爪」タイプです。

ふつうに想像すると「爪」タイプを思い浮かべると思いますが,個人的には,MV32Tの「臼」タイプの方が力強くていいような気がします。単純だし(^^)



【手順4】患部を洗浄

汚れたグリスを取り除きます。

本当は,盛大にパーツクリーナーを噴射したかったのですが,夜中の12時に室内でクリーナーを噴射(しかもパジャマだ)したら,別のお悩み相談室に通報されかねません。

そこで,キムワイプにクリーナーを染み込ませ,地味にふき取る作業方式にしました。

おぉ~,生まれ変わったラチェット部!! 爪もすっきり(^^)

おぉ~,生まれ変わったラチェット部!! 爪もすっきり(^^)

Nikon D90 + Nikkor 35mm F2D
もちろん,ハブ側もお掃除しておきました(^^)

もちろん,ハブ側もお掃除しておきました(^^)

Nikon D90 + Nikkor 35mm F2D

といっても,そんなに大変でもなく,5分もあれば元通り(初めて見るけど)のきれいなハブ・フリー・ラチェットになりました。

ラチェットの爪は細いバネで固定されているようですが,どう見ても,「外すと組み立てるのが面倒くさそう」という臭いがプンプンします。

こちらは,夜中だし,パジャマなので,ラチェット爪の分解までは踏み込まないようにして,清掃作業終了です。



【手順5】グリスを塗り込む

患部に軟膏,いや,グリスを塗ってあげます。

今回も,MV32Tの時と同じ,FINISH LINEの「プレミアムテフロン」グリスをガンで注入してあげました。

問題があれば,あとで減らせばよかろうということで,例によって,ちょっと多めに塗り込みました(適当である・・)。

今回も,ちょいと粘度が低めのFINISH LINE「プレミアムテフロン」グリスを使用。

今回も,ちょいと粘度が低めのFINISH LINE「プレミアムテフロン」グリスを使用。

Nikon D90 + Nikkor 35mm F2D
ハブ側はこんな感じに。

ハブ側はこんな感じに。

Nikon D90 + Nikkor 35mm F2D
フリーボディ・ラチェット側はみっちりと(^^)。爪の間までギューギューに充填。

フリーボディ・ラチェット側はみっちりと(^^)。爪の間までギューギューに充填。

Nikon D90 + Nikkor 35mm F2D



【手順6】戻し作業

後は,書くのが面倒になりました。

バラしたときと逆の手順で組み立てて完了です!(笑)

MV32T(DT-SWISS 240S)と違い,ラチェットの爪をはめ込むのが多少難しいですが,落ち着いて,ゆっくり作業をすれば間違える場所は無いでしょう。

また,キャップをつけるとき,イモネジで固定する前に「ベアリングの玉当たり調整」をする必要があります。キャップを締めこんでいて,きつくなったら少し戻して完了にしておきました。
(玉当たりは,今度,まじめに調整したほうがいいかも・・・)

MV32Tの240Sハブの方がやっぱり楽だなぁ。シールドベアリングだもん。




治療の結果

治療時間は,写真撮影も含めて1時間ほど。

分解・組立がMV32T(240S)よりも面倒ですが,仕上がり時間はそんなに変わりません。メインはグリス除去と注入ですから。

治療結果はこんな感じになりました。

大成功です!!

もはや,これがカンパのホイールとは誰も思わないくらいの静音ぶりです。

これなら,夜中に妻の枕元でブン回しても,熟睡し続けることでしょう(笑)

グリスを大量に入れてしまっているので,駆動時の「かかり」が悪くなるリスクはあるのですが,優秀なカンパのラチェット爪は,グリスをかき分け,ちゃんとハブと連結して駆動してくれます。

不安な挙動はまったくありませんでした。

強いていえば,マニュアルのようなものがまったく手に入らなかったので,各部の締め付けトルクがいい加減なところ。

ま,ネジの太さにあった,適当なトルクで締めておいたので,特に問題は無いとは思うのですが,どなたかご存じの場合は教えてください~

ここまで書いておいてなんですが,なんと多くのメンテ本にカンパハブのメンテナンス方法が載っていました。

我が家にある「ロードバイクのメンテ&修理」にも「ガイ・アンドリュースのロードバイクメンテナンス」にも,「改訂 ロードバイクメンテナンス」にも載っていました・・・。

「手組用ハブとは違うのでは」と思っていたのですが,スポークを支える部分がストレートなのかJベンドなのかの違いだけで,基本構造は完成車ハブもRecordハブもまったく同じでした。今度,本を読んでちゃんと調整しておきます。



まとめ(2回の大手術を乗り越えて)

夜中の11時からの作業は約1時間ほどで無事に終了しました(結局,ずっとパジャマでした・・・)

結果は,前述の通り,ほぼ完全な無音化に成功しました。

前回のMV32Tに続き,やはり,ラチェットからの爆音は単なるグリス不足・劣化だと思わざるを得ません。

あなたのハブもこんなことに!! (と,小林製薬風に煽ってみる)

あなたのハブもこんなことに!! (と,小林製薬風に煽ってみる)

Nikon D90 + Nikkor 35mm F2D

世の中にあふれる,爆音カンパハブ。

確たる技術的根拠があるわけではないのですが,その多くは,グリスアップすることで無音化し,また,寿命も幾分伸びてくれるような気がします。

できれば,メーカー(または販売店)も販売時から,しっかりグリスアップし,「カンパはうるさい」という先入観の払拭につとめていただければと思います。

それでは,また1年後(?),ラチェット音がうるさくなり始めた頃にお会いしましょう!(^^)

おしまい。



【おまけ】

常用レベルの回転数まで上げてみると,こういう感じになります。

「ヒュ~ン」という,エアロスポーク特有の音が聞こえてきます。なんか,飛行機みたいな格好いい音で,また少し,SHAMALが好きになりました(^^)


■「ホイール」カテゴリー内の前後記事
2011年04月27日 | カテゴリ:  ホイール | ID: 10022
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